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カンティーナ訪問記-ヨスコ・グラヴネルJosko Gravner

フリウリシリーズを締めるのはやはりこの人をおいて他にない。ヨスコ・グラヴネル。イタリア最高の白ワイン生産者と言われ、フリウリのみならずイタリア全土のワイン作りに多大な影響を与えた人物である。自然なワイン造りを追い求めて常に変化を続けつつ、現在もイタリアワイン界のトップに位置する生産者。

カンティーナはゴリツィアGorizia近郊のオスラヴィエOslavjeにある。すぐ向こうはスロヴェニア。看板がなく場所が分からなかったので、道端の人に尋ねたら、隣の家がそうだった。確か庭にアンフォラが転がっている。息子のミハ君Mihaが出迎えてくれた。長身。190cmはあるだろう。英語が非常に堪能である。

まずは畑を見せてもらう。畑は20ha。カンティーナの周囲で数か所に分かれている。スロヴェニア側にもあるそうだ(下の1枚目の畑の途中からはスロヴェニア)。畑の標高は平均海抜180m。自然な栽培をこころがけ、基本的にはオーガニックである。この辺りは2回の世界大戦の激戦地。畑の中には不発弾が転がっている。本当は警察に報告義務があるのだが、そうすると畑作業が当分できなくなるので、そっと畑の隅にどけておくのだそうだ。なお、不発弾の爆発で親戚の方が数年前に亡くなられたそうである。ミハが手に持っているのが不発弾のかけらである。
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さてカンティーナに戻ると、パパグラヴネルは瓶詰めの真っ最中だった。これを横目にミハに醸造方法を説明をしてもらう。2001年ヴィンテージからは極めて単純な方法に統一している。ブドウは100%除梗後するだけで、グルジア製のアンフォラ(素焼の壷。サイズは12~26hl。)にそのまま入れる。床で口を開けているのがアンフォラである。
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酵母はもちろん天然酵母のみ。1日に数回ピジュアージュだけ行う。そうしているうちに勝手にワインができるので、約7か月後に取り出してプレス、アンフォラに戻して5ヶ月後に大樽へ。そこで熟成させて、収穫から約4年後にリリース、とこんな感じである。アンフォラの使用は「自然なワイン造り」を追い求める中で、最初にワインが作られた方法であるこれに行き着いたとのこと。97年に始めたが、最初の頃は要領がわからず、気付いたらワインが全てアンフォラから抜けてしまっていたこともあったそうだ(ビーズワックスを内部に塗ることで解決)。SO2はボトリング時に若干添加するのみ。

セラーに移動して、大樽から2002年と2003年をテースティング。白はブレンドのブレッグBreg(シャルドネ、ソービニオン、リースリング・イタリコ、ピノ・グリージョ)と単一品種のリボッラ・ジャラRibolla Giallaの2種類。02年と03年は対照的な年で、02年は雨が多く、03年は暑く全く雨が降らなかったとのこと。確かに凝縮感には差があるが、基本的な構造は共通している。長いマセラシオンで果皮から抽出されたタンニンから来る収斂性、テロワール由来の非常に強いミネラル感。個人的にはより凝縮され、甘味も強い2003年の方が好みである。2003年のブレッグBreg(試飲したのはピノグリをブレンドする前のもの)は蜂蜜、桃などのフレーバーに溢れた巨大な素晴らしいものだった。

そして赤に移る。まずはルーニョRujno2003年。最良年のみ作られるメルロー100%のワインである。樹齢は25~30年でブドウは単一区画から。これまた凄い凝縮感である。ブラックベリー、プリューンなどがグラスから鼻を直撃する。強くて甘いがとてもシルキー。このワイン、6年大樽で熟成の後は4年間瓶内で熟成される予定である。リリースは2013年。飲めるのはまだまだ先である。そして、最後に地場品種ピニョーロPognoloの2003年。まだ樹齢が低いため、品質には満足していないとのことだったが、レザーやスパイス系が香る、タニックで頑強なワインだった。これも6~7年大樽熟成、4年瓶内熟成とのことである。

手が空いたヨスコがセラーに来てくれた。眼光鋭く、きっちりした服装をしていれば学者かと思うような風貌である。こっちのイタリア語力などお構いなしにマシンガンのように喋る。曰く「ワインは生き物だ。ヴィンテージ差があるのは当たり前。」「ワインはコーラじゃない。工業製品じゃないんだ。1本1本違いが出ることだってある。」などなど、彼の哲学を一気に語る。その迫力たるや凄まじかった。

こういった哲学的な部分は必ずしも全員の賛同を得られるものではないかもしれないが、当たった時の彼のワインは本当に驚くべきものである。Bregの2000年はここ数年で飲んだ白ワインの中では間違いなくトップ3に入る傑作である。彼のワインは、白=ブルゴーニュのシャルドネ、と心底思いこんでいる人には少し理解が難しいかもしれないが、是非先入観なしに飲んでみて欲しい。きっと新しい白ワインの世界が開けるだろう。

今後はリボッラ、ピニョーロなど地場品種に特化していきたいので、シャルドネやカベルネ(このとき試飲していない赤ロッソ・グラヴネルRosso Gravnerに使用)は栽培を止めるかもしれないとのこと。醸造方法もまた新たな進化を遂げるかもしれない。伝統を重視しつつもラジカルなこの人たち、今後どこに行こうとしているのか、また是非訪問して確かめてみたい。
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<訪問:2005年4月>
by taurasista | 2008-03-20 17:29 | カンティーナ訪問